夫は普段、ボーっとしていますが、こだわりのある事柄については、地味に頑固に、そのこだわりを押し通そうとします。物腰こそやわらかいので一見穏やかで、私も結婚当初は気が付かなかったのですが、実はすごく強情な人なんだとわかりました。だから彼のこだわりのある部分については、私は気が付き次第、夫に任せるようにしています。ケンカになるならまだマシで、夫は一度へそを曲げるとしばらく口を利いてくれなくなったり、本当に面倒臭いからです。

そんな夫の嫌な部分を、そっくりそのまま引き継いでしまったのではないかと思われるのがうちの息子です。顔は私に似て、赤ちゃんの頃はよく女の子に間違われた程の可愛い顔をしていますが、自分の好きなものは絶対人に譲りません。一人っ子だからなのでしょうか、執着心も半端なく、お気に入りのおもちゃは壊れたり傷んで捨てるまで、自分の手元から離そうとしないのです。ですからここ数年は、クリスマスやお誕生日のプレゼントもおもちゃなど執着しないような物にしようと工夫しているのですが、子どもにとってはどんな物がおもちゃになるかわかりませんよね。今お気に入りのキッチンタイマーも、まさか子どものおもちゃになるとは思わずに私が買って来たものです。

来月から小学校にあがるので、いつまでもおもちゃを手放せないというのでは困ります。そこで私は、子どものおもちゃを金庫に隠しました。寝ている間に枕元にころがっていたタイマーを持って来て、夫の書斎にある金庫にしまったのです。翌朝息子はしばらく必死になって遊んでいましたが、そのうち諦めて、折り紙や絵本を手に取るようになったので、ほっと一安心。大成功だと思っていました。

ところが入学式の前日。夫が金庫から何かを出そうとして、キッチンタイマーを見つけ、その存在を息子に知らせてしまったのです。結局、翌日の入学式には、空っぽのランドセルに、キッチンタイマーを入れました。